Music-Event Report

雨の渋谷でCOMMON主催の地下室PARTY

2004.6.14

雨の似合うアーティスト、私の中ではCOMMONしかいない。15歳の時、友達に貸してもらったCDの中にCOMMONの3rdアルバムがあった。それが私とCOMMONの出会い。鳴り響く低音ビートに激しいラップが乗ったものと、また違うHIPHOP。メロウなトラックに彼の優しく、深い意味の詰まったラップが重なる。彼のフロウは何故か雨に似ていると私は思った。それから七年。今日私はCOMMONに会うために、雨の中を傘もささずに友達と走り、会場となる渋谷DUOへと向かった。
 最近出来たばかりの「渋谷DUO」は、ライブ会場としては小さく、クラブのようだった。ジャミロクアイが手掛けたというその内装は、白と黒と赤をレトロな感じで使っているのにモダンな感じがして、私の好みだった。会場をいっぱいに埋める客層は、他のHIPHOPのライブに比べると年齢に関係なく“大人っぽい”人が多く、DJタイムに体を揺らしたり、お酒を飲んでいたり、恋人と話をしていたり、開演前の会場には既にCOMMONと同じような色気が漂っていた。
 DJの「ONE,TWO,THREE!」というカウントと共にステージに上がったCOMMONは、緑に黄色のラインの入ったジャージにジーンズ、そしてキャスケットという彼のスタイル。THUG系のラッパー達からは、オシャレ系の彼の格好は不評らしいが、COMMONにはセンスがある。かっこいい。彼はマイクを掴み力強くフリースタイルを始める。最前列の観客との距離はゼロ。歓声を上げながら手を伸ばす観客達の手を一人ひとり触れながら、「Come on、Move it、Shake It、 Bounce it!」と会場を盛り上げる。あまりにCOMMONが近くにいるので、観客は前へ前へと進み寄る。ジャージを脱ぎオレンジのTシャツ姿になったCOMMONは、
「Peace!チョウシハドウ?」と言いスポットライトの当たる中で拳を上にかざした。COMMONの日本語に私達は微笑みながら、歓声を上げ彼に答えた。
「今日はうちの地下室でのホームパーティ。このパーティのホストを勤めさせて頂くCOMMONです。みんな自分自身でいることを楽しんでくれ!JUST BE WHO YOU ARE!」
そう言うと、コール&レスポンスで観客が皆声を出し彼に答えるまで、彼は私達に呼びかけ続ける。一方的なライブではなく、ここにいる皆でパーティを楽しみたい、という彼のメッセージが強く伝わってくる。そして、フリースタイルから綺麗に曲へと繋がっていく。「Tha Movement」だ。彼は曲と曲をスムーズに繋げるDJのようなMCだ。彼の地下室は、次第に一つになり始める。
  COMMONが連れてきたというブルックリン出身のDJとの息はぴったりで、曲の間に綺麗に挟まれるフリースタイルが映える。COMMONはDJのスクラッチに合わせ「I WANNA MAKE IT FUNKY 4 YOU!」と、何度も繰り返す。次に「FUNKY 4 YOU」が歌われることを察した私達は胸の高鳴りを歓声で表す。恋人のErikah Baduとの曲。COMMONは「YOU!」という度に観客を一人一人指差す。「COMMONとErikahってなんてお似合いなんだろう。」と憧れる私。
「これはELEVATIONパーティ。もっと女の子のエネルギーを感じたい!女の子ももっと男のエネルギー感じたいだろ?」
COMMONはそう言うと、この中から一人、女の子にステージに上がってきて自分のダンスして欲しいと言った。“私を選んで!”と手を挙げる私と女友達と他の女の子達。COMMONは前の方にいた女の子を選ぶと、彼女と踊りながら「Come Close」と「I used to love her」を歌う。そして、「Love of My Life」。私は彼のこの曲のPVを思い出していた。その中で彼は耳の聞こえない女の子に、紙芝居のように自分の気持ちを絵に表して告白していた。とってもCOMMONらしい、優しくて繊細なラブソング。
「アメリカでHIPHOPは、高級車やでかい家、金持ちになることが前に出されている。俺がLOVEを前に出すことを批判するやつも多い。だけど俺にとってはLOVEが全てなんだ。」
私は、“良くぞ言ってくれた!”と拍手してしまう。彼のそういう部分に共感してここに来ている人が多いのだろう、皆彼の言葉を支持している。彼は「HIP HOP!」と何度も叫ぶ。ファッションの一部のように扱われ始めた“ブリンブリン”だけがHIPHOPではなく、彼の音楽がHIPHOPであることを主張しているように感じた。
「N.Yでラテン系とアフリカ系の人達からHIPHOPは始まった。そして今、日本も含め世界中に広がった。俺の地下室で、本当のHIPHOPを感じてるか?」
DJがバトルのようなスクラッチ技を披露した。COMMONが「Sixth Sence」を歌い、ブレークダンスをして見せた。私たちは、感じていた。彼の地下室で。HIPHOPを。
  「日本のラッパー、ステージに上がってくれ!」というCOMMONの声に、会場から二人のラッパーがCOMMONの隣でフリースタイル。ライブというより、彼の言う通り、COMMON主催のパーティが続く。パーティは盛り上がり、COMMONは観客の中にダイブした。「The Light」を歌うと、「アリガトウ」と日本語で言いCOMMONはステージから去る。パーティを終われない私達は、アンコールを求め、再びステージに戻ったCOMMONは最後の最後に「Resurrection」を歌う。これだけは絶対に聞きたい、と開演前から言っていた友達は、私に目で合図する。「俺にとって世界で一番きれいなHIPHOP」と彼は言った。

COMMONのパーティが終わり彼の地下室から出ると、外は大雨。バイトに遅れそうになって駅に向かって走る私は、雨に濡れて髪はぐしゃぐしゃになり、パンプスの中にも水が入ってきたけど、今日の雨はそう悪くない。
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