Music-Event Report

サマソニ2004@幕張メッセ

2004.8.8

―Nas,Jurassic5,BeatieBoys―

夏休みが始まって、夜中クラブに行って朝方眠るような生活をおくっていた私が、朝早く起きて友達の車に乗り込んだ。向かう先は千葉マリンスタジアム・幕張メッセ。サマーソニック(以下サマソニ)に行くのは初めて。ROCKのイベントという意識があったが、今年はJURASSIC5、NAS、BEASTIEBOYS、RHYMESTERもでるという。(私はロックも好きだけど。)話によると、今年からHIPHOPという新しい風を吹かせようという試みであるらしい。今年のサマソニにHIPHOP界からこんな大御所アーティスト達が続々と出演をすることを、知らない人たちも多かったのではないか。BEASTIEBOYSは、この夏多く開催されるフェスティバルの中で唯一サマソニにのみ出演を決めたという。とてつもないイベントなんだろうな、と胸をドキドキさせて会場へ向かう。

11時からのRYHMESTERに十分間に合うように出発したばずなのに、マリンスタジアムから幕張メッセへ移動している間にライブは終わってしまう。なんて広大な、会場なんだ!ここに一体何人着ているんだ!なんなんだこれは!!私は初体験のサマソニの大きさに唖然とした。7日と8日、二日間に渡って約70組のアーティストが出演している。会場は五つに分かれていて、配られたタイムテーブルを見て、好きなアーティストのステージを見に行くということか。プロの手による、音楽好きのための、文化祭みたいだ。ジリジリと太陽が私の肩を焼く。日焼けしたい私は水着のブラ一枚になる。水を買う。マリンの会場へ入る。サマソニへ挑む。超興奮して。

マリンスタジアムは、馬鹿でかい。中心のステージ、両隣にあるスクリーン、ステージ前のブロック、とその後ろのブロックが立ち見の会場で、それらを囲むようにしてズラーっと客席が上の上まで続いている。その一番上には、夏の空。その中で太陽がギラギラと照っている。把握出来ない数の人が、その会場の色んなところに沢山いる。今まで聞いたことがないような音量の音楽が、その会場の色んなところに響く。あっという間に、太陽は汗ばむ私の真上に移動して、ステージにJURASSIC5が立つ。私の立つステージ前のブロックが人で埋まってゆく。後ろを向いても、その後ろは果てしなく、どれくらいの人がいるのかも把握出来ない。緑色のシートがひかれた地面が燃えるように熱いのをミュール越しに感じている。私たちが叫びだす歓声も聞こえない程のボリュームの音を、二台のターンテーブルが作り出す。JURASSIC5が、一気に会場にラップを叩きつける。DJタプケミストが見事な擦りを披露する。DJヌマークと共にターンテーブルを肩から掛け、ミキサーをお腹に貼り付け、音を作り出す。「TOKYO!」とレスを求める彼らに届くように私たちは叫ぶ。彼らのオリジナリティーに私たちは釘付けになる。熱い会場の中の私たちを更に熱くする。飛び上がる私の額から汗が流れ出す。隣の人の汗が降ってくる。夏を思い切り感じながら、もみくちゃにされながら、JURASSIC5を全身で聞いた。

ライブが終わると、私と友達は既にぐったりとして、売店で水とカキ氷を買った。会場の周りには売店が並び、祭りのよう。音楽の夏祭り!

三時を過ぎても太陽は力を弱めることなく、照り続ける。ステージに横のクスリーンに、赤いキャップに黒いTシャツ、迷彩のハーパン姿のファレルが映し出される。私は、今度は上の客席からN.E.R.Dを鑑賞する。バンドが爆音の音を放つと、ステージ前のブロックに座って待っていたと思われる観客が一成に立ち上がった。ここからは、下の様子が良く見える。CHADHUGOを除いたメンバーがステージに立ち、「バウンスしてくれ!」と呼びかけ、観客がきれいな波を作り出す。私のいる上の客席でも、立ち上がって飛び跳ねる若者が多くいる。五本の指に入るHIPHOPのトラックメーカーであるネプチューンズの別の、ROCKな姿、N.E.R.D。私はアメリカにいた頃、学校で唯一ロックを愛し、赤チェックのボンテージを着、ロック好きな白人たちとつるんでいた黒人の男の子のことを思い出す。彼は他のHIPHOPが好きな黒人達から変な目で見られていた。N.E.R.Dがかつてある雑誌で「俺たちは黒人で初のロックンローラーになりたい。」と言っていたのを思い出す。音楽というでっかいフィールドに、人種なんてちっぽけなものは関係ないのだ。黒人の生み出すロックの音に、今、大勢の日本人が首を振って飛び跳ねている。私の隣に座る白人のカップルが体を揺らしている。「君と俺、俺らは皆同じなんだ!」ファレルが叫んだ。独特の高い声で、JayZの曲に参加したパートを披露する。そして、「さて、ロックンロールに戻るとするか!」と言い、新曲の「MAYBE」で、“俺がロックスターなんて信じられないかもしんないけどさ、、”というサビを熱唱し、観客を吠えさせる。「SHE WANTS TO MOVE」、そして「戦闘の準備はいいか?」と叫び、「LAP DANCE」で“この社会は俺を殺したがる”というサビを繰り返す。ROCKとHIPHOPの共通点は、もしかしたらこの“怒り”なのかもしれない。ファレルは兵隊のように右手を額に当て挨拶するとステージから去った。下の会場に立ち尽くす客たちの汗がここから見えるかようにキラキラと光っている。塩の香りを包む風が私たちの間をすり抜ける。私はたまらなくなって、下の会場へと向かう。次はNAS。出来るだけ前で見たい。

「HIPHOPの準備はいいか?」と叫ぶDJが低音ビートを唸らせると、白のTシャツにデニムのハーパン、黒いレンズの大きなサングラスを掛けたNASが一礼し、登場する。「NY STATE OF MIND」を熱唱する。“真冬のNYCの地下室が似合う”という勝手なステレオタイプの私の考えを吹き飛ばすように、NASは真夏の太陽の下、一つになることが不可能だと思われた量の観客を見事なまでに一つにする。私たちは、手を上げ、声が枯れるくらいの大声を出す。それでも周りを包み込む爆音の音に呑みこまれてしまうのだ。「TOKYO!」とNASは叫ぶ。「REPRESENT」、「ISN’T HARD TO TELL」へと続き、私たちは、人差し指を空に大きくかざし、「ONE LUV」に体を揺らす。「愛は、一つだ!」NASが言う。それを私たちに伝えるためにわざわざここまで来てくれたのだろうか。「WORLD IS YOURS」の次に「HATE ME NOW」を歌うNASの力強さに彼の社会への怒りが伝わってくる。“俺を嫌ってもいいさ。だけど俺は止まらない。今止まることは出来ない。”NASのリリックに、私は熱く共感する。NASが中指を立てるよう、私たちに言う。世の中の理不尽なこと全てに対してのFUCK YOU!私たち一人一人の怒りを、今NASが全力で代弁してくれている。自分の中に溜まっていた怒りが、汗と共に少しずつ蒸発していくのを感じる。だから音楽ってヤバイ。「NAS IS LIKE」、そして「GET DOWN」、NASの声が枯れていく。それでもNASは全身の力を全て出し切るように、「ICAN」で“頑張れば絶対に自分の夢を実現出来る”というサビを一言一言を大事にするに歌う。そして、「MADE YOU LOOK」で私たちを一つにする。NASはステージにかがみ込むと、しっとりと「ONE MIC」の出だしを歌い始める。トラックの中のサイレンの音が大きな会場に鳴り響くと、NASは立ち上がり、一本のマイクを握りしめ、体を小刻みに動かしダンスをしながらリリックを空気に叩きつけるように刻んでいく。隣との距離がゼロに近いほど、大勢の観客が密着したこのスタジアムの中で、NASに必要なのはたった一本のマイクだけ。それだけで、彼は私たちをここまで熱く上げられるんだ。NASは「THANK YOU!」と何度も叫び、ステージに上がった時と同じように一礼し、ステージを去った。「マジやばくなかった?」そんな声が辺りから聞こえてくる。

マリンステージの大トリを勤めるBEASTIEBOYSが始まる頃には、すっかり太陽は空から消え、真っ暗になっていた。私は空に近い客席に座り、真っ白なライトが波打つステージを見下ろしている。昼間とは、まるで違う表情を見せているスタジアムの中に、一日の中で最高の数の人が詰まっている。立ち見の会場は、隙間の欠片もなくびっしり観客がつまり、中段の客席が少し余っているだけで、上の客席にもみっちり人が座っている状態だ。一度にこんなに多くの人を今まで見たことがない、こんな音量の歓声を聞いたことがない。軽く眩暈がした。ステージにスポットライトと共に茶色のつなぎを着たBEASTIEBOYSが上がる。光が赤から青に変わる。“BEASTIE”の音がスタジアムに、歓声を混ぜてドワーっと広がる。ステージの上に置かれたモニターも光を発する。HIPHOPというジャンルを超えて、既に“BEASTIEBOYS”という一つのジャンルにまでなりつつある、大御所三人組。観客が叩く手拍子が、一つのビートとなっていく。早口のラップが遠くのステージがらストレートに私の耳に突き刺さる。あまりの迫力に、私は席からステージへ転げ落ちてしまいそうな錯覚に陥る。上を見上げると、あまりに近い空の中へ飛び立てそうな気までする。新曲の「CHECK IT OUT」を最後の曲に、「アリガット!」と日本語で言いステージを去る。そしてスタジアム中からアンコールが湧き上がる。

駐車場へ歩く私の横で、打ち上げられた大きな花火が夜空を飾る。日に焼けた肩がヒリヒリ痛む。今日、どのくらいの汗を流しただろう。なんて“熱い”一日だったんだろう。ジャンルを吹き飛ばした、サマソニという音楽の祭り。これから、HIPHOPだけじゃなくて、POPSやHOUSE、TRANCEも“いい音楽”はどんどん加えていって欲しいと思った。「音楽」を愛する人間が世界中から結集するなんて凄く魅力的。育った文化も、肌の色も、宗教も、様々な私たちが共通して愛する、一つの「音楽」。その計り知れないパワーを私は暑い夏の一日に思いっきり感じた。

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