Music-Event Report

NE KOREA FESTIVAL TOKYO 2006 @代々木公園

2006.4.2O

―在日コリアンと日本人が一緒につくった1つの祭りー

3月になったばかりで、まだ空気も冷たい、ある夕方。私は喫茶店にいて、ある男の子の熱意にちょっと痺れていた。

『金もない。コネもない。だけど、俺たちには熱い想いがある!在日コリアンと日本人が交流を深められるようなイベントを、絶対に成功させたいんです!』と、大学3年生の在日コリアン3世の男の子は言った。イベントスタッフは全員大学生で、その1日のために1年前から走り回って準備をしているという。日本人と在日コリアンが共有する1つの“熱い想い”が彼らを動かし、1年という時間をかけてようやく開かれようとしている祭り…。それは、イベント慣れした私の耳にとても新鮮に聞こえた。

? イベントって、規模が大きければ大きいほど、色んな目的が絡み合うことで成り立っている。“そのイベントを通じて何かをプロモーションしたい”という目的を持った企業をスポンサーにつけて運営金を得て、そのお金で場所を借り、“集客力のある”アーティストにギャラを払って出演してもらう。より多くのお客さんを集めることが出来れば、イベントは黒字となり、ビジネスとしての成功を収める。もちろんイベント運営側も、出演者も、お客さんを“楽しませたい!”という共通した目的があることは確か。だけどそこには、“スポンサー様のご機嫌を損ねないように…”にという葛藤や、“お客さん集めて、金を稼ぐぞ!”という野望なんかも色々と混じっている。それが、悪いとかじゃない。だって、それがビジネスだし。イベントが成功すれば、みんながみんなハッピーになれるんだから、それはそれでいい。ただ、営利目的ではなく、“どうしても伝えたいメッセージがある”という1つの目的から、このイベントに全ての情熱を捧げる学生たちを見て、その“熱さ”に私は純粋に痺れたのだ。そして、そんな彼らの仲間に入りたくて、フィナーレライブのMCを喜んで引き受けた。

 それに、その原動力となっている“熱さ”は、在日コリアンとして日本で生きていく中での様々な葛藤が、作り出したものだと思ったから。“日本で生まれ、日本で育ちながらも、日本人ではない。周りの日本人の友達と、同じなんだけど、同じじゃない。”その感覚を、私が想像してみればしてみるほど、日本という島国で、コリアンとしてのプライドを貫くことは決して容易なことではないように思えてくる。私は日本人として、このイベントに参加する“使命感”のようなものも感じていた。

 当日は、雨。同じ日に幕張メッセで「SPRING GROOVE」という大イベントが開催されることもあって、当初から集客が心配されていたのに、雨。フィナーレライブが始まる頃には、代々木公園にいる人はとても少なくなっていた。チマチョゴリに着替えて出番を待っていた私は心配になり、ステージ裏から身を乗り出して外を見ると、ステージの前に傘がいくつも並んで見えた。ホッと安心したて、なんだかちょっと嬉しくなった。在日コリアン3世の幼馴染3人で結成されたバンド、SALA13がオープニングを飾り、コリアンの父と日本人の母を持つ在日二世の朴保率いるグループ、波人(パド)が続く。雨は少しずつ、強さを増していく。それなのに、少しずつ、お客さんの数が増えていった。レインコートを着た女の子グループ、子供が寒くないように、後ろから抱くようにしてステージを見ているお父さん、レゲエカラーのニット帽を被ってしきりにライブを盛り上げてくれている男の子、色んな人がステージから見えた。韓国で生まれ、大阪で育ったR&BシンガーJiNが、CORN HEADとDJ YUTAKAを引き連れてステージにあがる。彼の感情の込められた美しい歌声を聴いていると、なんだかこの雨が、演出の一部のように見えてくる。いつの間にか、ステージ前の傘の数が物凄く増えている。そして、ライブのとりを飾るのは在日コリアンのCHOZEN LEE (FIRE BALL)。彼が登場すると、不思議なことに雨がピタリとやんだ。お客さんは沸いた。その時笑顔じゃない人が、一人もいなかったのを、私は見た。そして、フト思った。

「みんな同じだから、こうやって一緒に音楽で盛り上がったり、一緒に笑ったりできる。それでいて、みんな違うから、おもしろいんだ。」

P.S.

 帰り道、電車の中でイベントスタッフが作った雑誌を読んだ。とても綺麗に編集されていた。記事もとてもよく書けていて、面白かった。その中で、在日コリアンの女の子の言葉が心に残った。

「日本名もあるけれど、私は本名の韓国語の名前を使っている。昔は、みんなになかなか覚えて貰えない自分の名前が大嫌いだった。学校で新学期に自己紹介することが、苦痛だった。だけど、これからも私はこの名前を使っていきたい。今は、自分の名前が好き!」
<<BACK